地域に入ってくきっかけとなったのは、ある事業があったからだ。2010年、厚生労働省の安心こども基金事業「ひとり親家庭等の在宅就業支援事業」を若手職員が中心となり、企画提案し、2年間で約3億円というソフト事業を完遂した。この事業を実施するにあたり、庁内若手職員17人で構成されるプロジェクトチームを組織。事業実施を通して、部署を超えて職員一人ひとりが持つ知識やネットワークを共有することの重要さを痛感し、それらは、コアメンバー含め皆が感じていた危機感や不安感を解決するための手段であると確信。 その確信から、2年間の補助事業終了後に、市役所職員で「対話」から「行動」を促すための意見交換会「しおラボ」を設立。毎月第4木曜日の午後6時から開催し、現在までに市民公開の特別編を含め39回開催。転機となる第17回しおラボ「魅力ある商店街を考える」会において、「実際に、空き店舗かりなてみなきゃわからない!」とプレゼンし、市役所職員の有志を集め、実際に空き店舗をかりてみることをスタート。
この場所は、nanoda(なのだ)と名づけられ、2012年4月から活動がスタート。
(1)4年間空き店舗であった場所を掃除し拠点として整備。毎月恒例企画として①週末の朝、みんなで朝食を食べる「朝食なのだ」、②毎月20日(ワインの日)に、塩尻産ワインを楽しむ「ワインなのだ」を実施。それぞれの企画は、商店街の住人や若手後継者、市若手職員、信州大学の学生たちの交流を生むとともに、普段、商店街に足を運ばない、若者などが商店街の現状や課題を身近に感じる機会にもつながっている。
(2)メンバーに商店街の店主も加わり、現在50人で運営。会費は、建物の維持管理費のほか、建物回収のために積み立て、今年8月には入り口の扉がなかった空き店舗の改修を行い建物の維持に加えて資産価値を高めた。
(3)一番力を入れている企画「空き家をお掃除なのだ」は、商店街に約30ある空き店舗の大家にお願いし、高齢者である大家さんが普段掃除が困難な空き店舗を定期的に掃除。そのうち1軒の大家から、無償で空き家を提供いただき、2軒目の空き店舗(アトリエなのだ)運営につながった。また本活動が全国紙「TURNS」2013年夏号の表紙を飾り6ページ特集されるなど、市外への情報発信につながり、岡谷市の若者が私たちと同様の仕組みで空き店舗を借りてオープンするなど、塩尻市近隣で3件の空き店舗活用へ繋がった波及効果がある。
(4)コアメンバーに商店街の若手後継者等が加わり、商店街の既存店(映画館、レストラン等)とのコラボレーション企画が実施されるとともに、和洋菓子店とパン店が新商品開発を行うなど事業所間連携も始まる。また首都圏の大学生のフィールドワークの場としても活用され、3大学の学生が卒業研究のテーマに取り上げ、研究拠点としても活用。
(5)市職員だけでなく商店街の若手後継者をコアメンバーに加えることにより、商店街の当事者である事業主が自分ごととして本事業を認識しはじめ、今後の事業継続につながる兆しとなっている。