鶏ちゃんは岐阜県下呂市、郡上市周辺の郷土料理ですが、その食文化のない地域に育ち、就職してからこの料理を知った私は、何とか知名度を高められないかと考えてきました。
しかし、鶏ちゃんは地域によって味がバラバラで、発祥を名乗る地域も複数あり、まとまってのPR活動は難しいとされてきました。私は異なるものを無理に一つにするのではなく、緩やかにつなぐ組織をつくればまとまると考え、高度な自治権を持つ州の連合体であるアメリカ合衆国をイメージし、「鶏ちゃん合衆国」のコンセプトを発想しました。
この活動は県の仕事ではなく、民間のまちづくり活動でなくてはならないと考えていた折、24年1月にご縁で意欲ある2名の賛同者と知り合い、合衆国の設立を始動。仲間の輪が広がり、約半年で「建国」にこぎつけました。
鶏ちゃんを提供する飲食店を「州」、小売専門店を「自治区」とし、その数は約80に及んでいます。また、鶏ちゃんを愛する方々=「国民」の数も約700名になっております。
合衆国は会費で運営する自主的なまちづくり団体であり、私は、事務局長にあたる「国務長官」として、合衆国の企画・運営等全般を担当しています。
(1)成果・効果
イベント等で「鶏ちゃん合衆国だ」と口にする人を多く見かけるようになるなど、知名度が上がっている実感があります。これに伴い、メディアで鶏ちゃんが取り上げられる頻度は確実に増加しており、加盟の飲食店やメーカーからも「お客さんが増えた」「売り上げが増えた」との声が聞かれるようになってきました。
(2)チャレンジ性
イベント出店中心の展開とは一線を画し、各地で味の違う鶏ちゃんの食べ比べを行う交流会を行い、鍋をつつきながら交流を深めるという「人と人とをつなぐ活動」であることを重視しています。そのほか、国旗や国歌、パスポート、議会、羽―鶏大学など遊び心に富んだ活動で話題性をつくることで、食を通じたまちづくり活動のあり方に一石を投じたいと思っています。
(3)波及性
長野県の鶏肉郷土料理の「山賊焼」と「鶏和条約」を締結し、連携交流を進めることが決まったほか、他県からの視察も入るようになり、合衆国の活動のコンセプトが他地域に広がりつつあります。県内では、県立高校の観光学科が取り組んだ観光プランづくりや、児童への鶏ちゃん食べ比べ講座を通じて、食育などにも波及しています。また、市町村域を超えた食のまちづくり活動の実践例として、行政関係者にも評価をいただいています。
(4)協働性
鶏ちゃん合衆国の役員は18名おりますが、約半数は、私のような公務員、建築士、デザイナー、広告代理店、印刷業、ライターなど鶏ちゃんのビジネスに直接関係のない有志です。例えば、印刷物やPRグッズのデザインはデザイナーが行うなど、自らの強みを生かした活動を行っております。
(5)継続性
合衆国は構成員である飲食店やメーカー等の会費により運営されていますが、その金額は年間5千円~1万円で負担感のない水準としており、PRグッズは実費頒布するなど、運営を行政や補助金に依存しないことで持続可能な体質にしています。