小峰さんは、埼玉県庁で子育て支援や高齢者支援の仕事をする中で、地域で誰もが気軽に立ち寄れる「居場所」や「交流の場」が必要だと感じていました。そんなとき「コミュニティレストラン」の構想をつづった小論文とその筆者との出会いがありました。そして、「行政仕事の枠で考えていては、居場所づくりをいつやれるかわからない。自分でやってみよう!」と一念発起、2009年、実家の土地にコミュニティカフェ「ヘルシーカフェのら」を建設、大家さんとなりました。カフェの店主は、この着想のきっかけとなった小論文の筆者です。
さらに2011年、高齢者が働ける物作りの職場「BABAラボ」の主宰者と知り合い、カフェ隣の空家となっていた実家を利用した工房が開業、翌年には工房2階に共同オフィスとレンタルサロンもスタートしました。
入居者や利用者たちはここで働いたり、いきがいを見つけたり、交流を深めたりしながら、地域でのネットワークを広げています。
最近では、入居者が編集した地域情報紙の発行や夏祭り等のイベントを開催、大家さんの実家と土地を拠点とし、顔の見える地域コミュニティが広がっています。また行政や学生の視察も多いです。
(1)成果・効果
カフェ:店舗に年間のべ4500人が来店。魅力は、地元産の野菜を使い丁寧に作る食事、来店者とスタッフの「顔が見える」関係性、子連れで気兼ねなく利用できる雰囲気や子育て支援企画など。2013年から、サロン経営志望者によるワンデー店主と、レンタルボックス(雑貨などの委託販売)がスタートし、地域の活動拠点、憩いの場となっている。
物づくり工房:20代~80代まで40名が「100歳まで働ける職場」を目指し活動。高齢者や子連れで働くママの雇用を実現。
共同オフィス:NPO等の支援に長けている事業者が入居。カフェ等を利用する人たちの相談役になったり、イベント等のコラボレーションも生まれている。
レンタルサロン:美容や健康にかかわる資格や技術を活かした開業を目指す女性たちが、経験を積んでいる。
(2)チャレンジ性
小峰さんの「一人の市民として、地域の居場所づくりにチャレンジする」という覚悟。また、空家利用、商売に不向きな住宅街での事業展開というチャレンジは、成功すれば他地域へのノウハウ移転を可能にする。
(3)波及効果
カフェ:子育て中のママや早期退職した元企業戦士が厨房に入ってフライパンをふったり、障がい者施設で作るお菓子を販売したり、地元農家の野菜を紹介したりと、カフェを拠点とした地域ネットワークが広がっている。
工房:高齢者の働き場所を創出する他、子連れで働くママや子供たちとの多世代交流が生まれている。また、短時間労働やワークシェアリング等も実現。
(4)協働
行政の街づくりや人材育成に関する委託事業を受託したり、行政と共催で講座を実施。また、行政の視察やインターンシップを受け入れたり、大学への研究協力も行う。
(5)継続性
ビジネスの視点を取り入れた「コミュニティビジネス」の手法をとることで収入が得られる仕組み作りに励む。