[No. 127] 避難所体験 学校に泊まろう!(火を囲んで防災ワークショップ)

日頃から「地域教育」や「コミュニティ」を意識している。地元の小学校のPTA会長に就任したのを機に、考えに賛同してくれた子ども会役員、隣接する児童館職員と企画した。普段通っている学校は避難所となり、他者との関わりなしでは生活できない状況に子どもたちを置いて、人との共同の大切さを、相互扶助体験を通じて感じてもらう、通常の防災訓練とは一線を画す、主体的な体験の場を創った。

 通年事業をこなすのではなく、自らが描く企画を実現したい思いから、校長、学校の先生、地域の役員さんに事あるごとに話をしながら準備を進めた。運動会、お祭り、講演会などが地域と学校を繋ぐ行事として実施されているものの、どこか形骸化し、肝心の子供、先生、保護者、地域の方々が主体的に活動をする場としては、少し物足りなさを感じていた。震災から2年が経過し、被災地はまだ復興中という状況にありながら、私たちの日常は震災前の不自由のない生活に戻りつつある。
また、「子供達の体験の場を創る」という観点から言えば、すべてが準備され、お客さんとして参加するのではなく、自らも一緒に作り上げるという体験をしてもらいたいという思いを伝え、地域活動のキーマン数名と共に学校に働きかけ、ようやく実現することができた。災害時、学校は避難所となる。満足な食料もなく快適な環境ではないことを実際に体験してもらう企画の性質上、参加者の安全や学校の管理責任などを危惧する声も地域(町会)からあがったり、学校も難色を示していた。しかし、結果として教職員、参加者からは親子ともに貴重な体験ができたという声をたくさん頂くことができた。

(1) 成果・効果
 活動のきっかけでも述べたとおり、十分な設備が無い学校という場所で、他者とともに一夜を過ごすことによって、他者を思いやる、気遣うことの大切さを感じてもらえた。
 特に、一晩宿泊した子供たちが、翌朝に積極的に後片付けをしていた姿が印象的だった。
(2) チャレンジ性
 学校に宿泊するという行為自体が、防犯面、管理責任などの面から難しく、これまで宿泊行事を行っていた学校もやめてしまったところもある。学校、PTA主催と銘をうって実施することのハードルが非常に高かった。そこで、区の防災担当課に防災訓練として位置付け、アルファ米などの非常食を参加者分用意してもらい、「防災訓練の一環」というねらいを加えた。
 また、夏開催のため、参加者の暑さによる健康面なども懸念されたが、不自由な状況を体験するということで了承を得た。
(3) 波及効果
 企画段階の心配は大きかったゆえ、また、教職員が全面的に協力してくれたことも相まって、学校、参加者、地域との関係性が深まった。
(4) 恊働
 実施したワークショップは、アイスブレイクにバースデー・ラインなどを導入し、グループで協力して段ボールを使った思い思いの家を創る、火を起囲んでのキャンプファイヤー、屋外で非常食を食するなど、常に他者との関わりを念頭にコンテンツを用意した。
(5) 継続性
 実施後、校長先生がさっそく参加者、参加教員にアンケートを実施してくれた。できれば来年も続けて欲しいという声も多く、次年度以降の開催、ならびに近隣の学校でも実施して欲しいと思う。
(ただし、宿泊行事の実施や、キャンプファイヤーなど、単体では実施している学校はある。)
 全体の所感として、段ボールWSは、大人、先生、子供もも夢中になって作品づくりをしている姿が印象的だった。