[No. 134] 豊かな学びの共同デザイン(地域資源と教職的技法のリンク推進)

地元小学校区で「まちづくり協議会」設立に参画。子どもと大人が一緒につくりあげるイベントを立ち上げる等、社会参画意欲や学力が高まる地域環境とは何かを模索しつつ、実践してきた。別途、行政職員有志とファシリテーション研修を重ね、行政と小中学校との橋渡しを通して総合学習等の充実に貢献。現在は、校外で培ったノウハウや人脈をフル活用し、地域再生と高校キャリア教育を一体的に推進するモデルの確立に尽力している。

10年ほど前、氏は高校教師として学力低下問題の根源を探るうちに、地域の教育力低下やまちづくりの重要性に思いが至り、ファシリテーション技法を習得、地元に飛び込んだ。同じ頃、人事交流で勤務した山間部の中学校でも、ふるさとを担う若者の育成を学校と地域が協働してすすめるNPOの設立に参画。一連の経験を通して、「学習意欲の向上には、外遊びや大人との“共汗&共感”体験を通して、大人や地域に対する一体感を高めることが有効」と気づき、以後、まちづくりと人づくりを一体的に推進できる仕掛けを工夫してきた。
その後、風通しのよい職場づくりを志向する県内公務員有志の会に氏を招待。夜な夜な研修を共にする中で、ある市職員が「総合学習を活性化したい」と相談。まもなく、行政・学校・市民団体等による企画組織が稼働し、それまでにない魅力的な学習活動が実現。ファシリテーションが知恵を集める威力や、地域が学校に協力する意義を実感させてくれた。
通勤の都合上、現在は地元を離れ、勤務先の高校において地域連携に尽力。現地の市役所とともに、地域課題を解決する活動を通して自分や地域の将来を考えさせるキャリア教育の確立に努めている。

1)氏が手がけた事業では、例えば、地域を流れる川に全く無関心だった小学生が、川で思いきり遊びながら学ぶ活動を通して、河川環境の向上を大人に力強くアピールでき、さらには、川で遊ぶ様子を描いた共同作品が美術展で優秀な成績を収める等、子どもが意欲的になった例が多い。こうした実績は、身近な教育問題が実は地域の課題でもあり、しかも然るべき技法の習得により改善できる可能性を示すものであり、貢献度は高い。

2)地域の教育力向上に教師が貢献したという事例をほとんど耳にしない中、氏の活動は、教師ならではの高い教育力を、地域に飛び込み、地域で発揮してきた点で特筆に価する。

3)膨大な実践に基づく精緻な理論に照らし、個々の現場に応じた解決策を平易に提示できる等、連携事業に関する守備範囲が非常に広いため、氏には多様な相談が集まってくる。こうしたニーズを背景に、全国各地で講演・研修・交流を行う等、氏は普及活動も積極的に行っている。また、協働事業を通して向上した見識や技能は、自身が高校のキャリア教育でフル活用しているほか、活動を共にしてきた仲間からも、地域や職場(役所等)で顕著な応用実績を築く者が続々と現れている。以上、波及効果は非常に大きいものがある。

4)異質協働は氏が最も得意とするところであり、例えば、子どもが自然に親しめる地域環境をつくる教育的な価値を共同発信するシンポジウムの内容を河川関係者と共同で練り上げた実績をもつ。最近は一連の実績に基づき、高校・行政・専門家・市民団体等が「人づくり・地域づくり」を一体的に推進するビジョンを提唱。今年度は、勤務校と地元市役所が協働事業をいくつか試行する段階まで漕ぎつけた。

5)残念ながら、個々の現場の継続性は氏の勤務先等に影響を受けているが、広域的な継続性は、氏の普及活動や、氏と活動を共にして実力を身につけた人物の増加により、着実に高まっている。