[No. 135] 聴覚障がい者とともに歩む手話サークル活動

 手話サークル(以下「サークル」とします)に所属し、サークルの役員として活動の企画をし、聴覚障がい者(以下「障がい者」とします)との交流活動や障がい者や福祉に関わる学習会に参加したり、地域社会に向けて、障がい者理解のための啓発活動もしています。また、研修会や講演会等での手話通訳、要約筆記を担当するだけでなく、通訳依頼のコーディネートをする通訳派遣担当もしています。

 昭和63年に教員として採用されました。初任地が聾学校だったため、障がい者の子どもたちへの授業、コミュニケーションなどすべてにおいて手話が必要でした。
「手話のできない先生なんて認めない」と言わんばかりの態度を、当時担任した子どもからつきつけられ、勤務終了後、手話を学び始めたのがきっかけです。
 仕事に必要で始めた手話でしたが、交流や研修会に参加し、成人の障がい者の方々からたくさん励ましていただきました。明るく笑われ、年齢も男女も関係なく仲良くされている姿がとても輝いて見え、自分自身のもつ障がい者観を大きくひっくり返されました。その場に身を置くのが楽しく落ち着くことがサークル活動を続けられている理由で25年目を迎えています。
 私が所属するサークルには現在、約40名の会員がいます。県内各地に同名のグループが存在し、合同での交流や学習を続けています。
 平成3年度には会長も引き受けました。現在は通訳派遣担当の役を担いながら、毎週火曜日、午後8時から9時まで市中央公民館でのサークル活動に参加しています。都合が合えば、通訳派遣の調整をするだけでなく、手話通訳活動を行っています。

 サークル活動は、障がい者との交流を通して、障がい者や手話、筆談等の多様なコミュニケーションへの理解、社会の不平等さを知る場となっています。そのため、一般財団法人熊本県ろう者福祉協会天草支部と共にあることを基本としています。
 手話を覚えるのは苦労しますが、会話ができた時の喜びを感じながら続けていく、仲間と共に歩む気持ちが大事なんです。
 最近、施設に入所された障がい者の方がサークルへの参加を楽しみにされています。「サークル活動日は、表情が明るいですよ」と施設の職員さん。「(手話という手段で)楽に会話ができる、コミュニケーションが取れることがいかに大切ですばらしいことかをつくづく感じます」とも話されていました。
 意思疎通ができないことは、聞こえない側だけでなく、聞こえる側も同じことです。介護に関わる通訳依頼も増え、専門機関の方と関わる機会も増えてきました。聞こえる側は良かれと思ってコミュニケーションを取らず、手出ししてしまいがちです。そうでなく聞こえない人たちの思いを汲み取り、必要な時に手を貸すことの大切さを、障がい者介護に関わって気づかれたケアマネージャーさんがサークル活動へ参加されるなどの広がりもあります。
 現在は、障がい者への緊急時等の情報保障についての協議を重ね、交通事故や急病等への対応は行政と連携して取組を始めたところです。さらに各種制度や情報が障がい者本人にきちんと届き、利用できるよう本人はもちろん、関係機関への理解啓発を図る取組の必要性を感じています。そのためには、もっと他機関との連携が必要だと思っています。
 ですが、サークルは様々な立場の人の集まりで一度に多くのことはできません。できる人が、できるときに、できることをやっていく、それが障がい者が安心して暮らせる社会につながっていくので、今後も活動に取り組み、ともに歩む仲間の輪を広げていきたいと思います。