[No. 146] 諏訪湖浄化で一緒に汗と知恵と未来を!~地域こそ教師なり

 諏訪湖の汚染が顕在化して、およそ半世紀になります。その浄化は、日本の湖沼全体のシンボル的課題でありました。長野県による浄化計画が実行されて約40年、ようやく諏訪湖自体の浄化傾向が目に見える段階に達しつつあります。諏訪に生まれ育ち、県職員となったぼくは、諏訪湖浄化を筆頭とする諏訪地域のまちづくり・活性化にかかわってきました。これまで25年間に、諏訪湖浄化を通して地域から教わったことをお伝えします。

 平成元年5月、諏訪市において住民の提唱による「日独環境まちづくりセミナー」が開催されました。ドイツから水質浄化とまちづくりの専門家を招きました。事前に送付した質問書を元に現地視察に同行、住民・専門家・行政の三者が膝をつきあわせての7日間でした。このセミナーを通じて、今後より良い生活環境をつくりだしていくのに必要なことは、住民自らが積極的に学習、行動、提言することだと気づきました。その後もセミナー実行委員会を継続させて、さらに広範な関心ある住民を含む、まちづくり市民協議会に発展させようとの検討を得て、「諏訪環境まちづくり懇談会」(通称まち懇、以下同じ)が発足しました。当時、読書会の先輩からお誘いを受け、「長野県職員を選んだ一番の動機が、諏訪地域を元気にすること」であるぼくは、勇んで参加。まち懇は、「環境まちづくりの担い手は市民であること。ボランティア活動を通じて、諏訪地域の環境の改善とその発展を図ること」を基本方針とし、「オリンピックまでに泳げる諏訪湖に」を合言葉としました。平成19年高齢化とマンネリ化を解消し、会員層を広げるために解散。その後の活動は、諏訪湖クラブが継承しております。

 まち懇の主な事業は、環境まちづくりセミナー(5回)、関係機関および市民への提言(4回)、まち懇通信の定期発刊、まちづくり現状地図・将来地図の作成、湖周バスの運行(7年)、低公害ハイブリッドバスの運行、講演会(6回)、諏訪湖チャリテイウオーク(毎年)、諏訪湖流入河川24時間一斉水質調査、下諏訪ダムをめぐるシンポジウム、諏訪湖で泳ごう(5回)などです。まち懇での20年間に、ぼくは事務局・記録係→諏訪湖・水辺グループリーダー→副会長をさせていただきました。7年目となる諏訪湖クラブでは、庶務担当理事です。(1)成果・効果としては、これまでの「行政」対「反対住民」という関係から、意見の違いや対立が出ても対立が埋まらなければ並立したままでいく。生活の質である友情を共有した、諏訪のまちを良くする平等な市民・同志という信頼関係を少しずつ醸成できたことです。(2)チャレンジ性としては、公務員として培った記録力や調整力が活かせました。記録ノートは26冊に及びます。まち懇出身の首長も複数名誕生し、「まち懇はどう考えているか」と行政から意見を求められるようになりました。次に(3)波及効果です。他地域では、24時間水質調査が諏訪湖から天竜川水系213㎞(静岡県)まで拡がりました。40以上の企業・団体が参加しての諏訪湖・天竜川水系健康診断を、10年間行いました。他分野では、諏訪湖クラブから「自然エネルギー信州ネットSUWA」や「下水道エネルギー利用研究会」などの発足をみております。(4)協働性としては、住民は諏訪湖に関係の深い旅館経営者、漁業関係者、農業者、商店主、大学教授、議員、会社員、主婦、建築士、公務員と多種多様でした。そうした会員が一緒に諏訪湖で、汗を流しました。 (5)継続性と言えば、「まちづくりは人づくり」です。ぼくらの代に出来なかった事は、若い世代へ愛着とともにバトンタッチです。